原作マンガは完結しているのに、テレビ放送の続いているアニメは珍しくない。アニメ監督の大塚隆史さんは「制作の裏には、アニメ専門の脚本家がいる。通常は原作をベースシナリオをつくるが、『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』など、原作の世界観の中で、まったく新しいシナリオを一から作るケースもある」という――。(第2回)

※本稿は、大塚隆史、堀田孝之、フナヤマヤスアキ『アニメができるまで』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■物語はどうやってできているのか

Q アニメの物語はどうやってできる?

【監督】今日はシナリオの話もしようか!

ユーリはい!

【監督】シナリオが何かはご存じかな?

ユーリ脚本のことだよね。学校の文化祭で演劇の脚本を作ったことあるよ。アニメの脚本も同じようなもの?

【監督】基本的には同じだね。登場人物が、いつ、どこで、どんなセリフを言ったり、どんな動きをしたりするのかが文字で書かれているのがシナリオです。

監督が決まると、プロデューサーと一緒に、「キャラクターデザイナー」「美術監督(美術設定)」を選び、同時に誰を「脚本家シリーズ構成)」にするのか決めなければならない。この3本柱は同時並行で進んでいく。シナリオを固めていきながら、登場人物のキャラクターデザインや、背景の美術設定をどうするかをどんどん決めていきます。俳優とロケ地とシナリオが決まれば、いよいよ本格的なアニメ作りがスタートするというイメージです。

シンジ監督はすべてに顔を出して大忙しですね。

【監督】アニメ作りの全工程で、判断をくだすのが監督の役割だからね。

■「原作マンガ1巻=アニメ1回分」ではない

ユーリ監督ちょっとストップ。「シリーズ構成」って何?

【監督】たとえば、今僕がやっているマンガ作品のアニメ化は、コミックスの1巻から15巻を4クール=48話でアニメにする企画です。そうすると単純に、原作の第1巻をアニメの第1話にすることはできないよね。テレビアニメは本編が1話およそ21分なのだけど、マンガはその時間に収まるようには作られていない。だから、たとえばマンガの1巻では3話分作るけど、2巻は内容が濃いから4話分作る。でも3巻はアクションが多いので1話分にまとめてしまう……といった具合に、アニメシリーズ全体で、各話、マンガのどこからどこまでを描くのかを決めるのが「シリーズ構成」の役割。もちろん、監督や制作プロデューサーテレビ局プロデューサーなどと打ち合わせを重ねて決めていきます。

Q シリーズ構成って私にもできそうじゃない?

ユーリシリーズ構成、簡単そうじゃない?(笑)

シンジ俺もそう思った。自分にもできるかも。

【監督】作業としては難しく見えないかもしれないけど、アニメにおける時間の流れとか、各話の盛り上がりとか、この回は決めゼリフで終わらせようとか……いろいろ考える必要がある。全体のバランスを考えて作品のビジョンから外れないように、必要であれば、大きな変更・入れ替えをするなどして、マンガの印象どおりに観てもらえるように工夫するのが「シリーズ構成」だといえます。

■無理やり詰め込めば情感がなくなってしまう

シンジその仕事を専門にしている人がいるんですか?

【監督】シリーズ構成だけをやっている人は基本的にはいません。脚本家のボスがシリーズ構成を担うことが多いです。監督自身が行うこともあります。

ユーリにゃるほど。職種っていうより、誰かがやらなければならない作業ってことね。

【監督】たとえば僕が以前やった仕事を例に挙げると、マンガ原作1巻から11巻までを、105分のアニメスペシャルに収める仕事をしました。マンガエピソードをすべて詰め込んでいたら、とても収まらない長さです。もし無理やり詰め込んだら、情感のない足早なダイジェスト版になってしまい、作品のムードをぶち壊し、ぜんぜん原作の魅力を伝えられないアニメになってしまう。だから、描くエピソードを厳選してシリーズ構成を行いました(『ONE PIECE エピソードオブ東の海(イーストブルー)』)。

シンジ原作の魅力とかポイントがわかっていないと、シリーズ構成は難しいんですね。

【監督】そのとおり。シリーズ構成もそうですが、原作の良さがどこなのか理解できていないと、すべての工程において「いい仕事」のしようがないから。

■そのままアニメにしても視聴者には届かない

Q 原作マンガがあるなら脚本って何をするの?

ユーリ原作マンガのあるとき、脚本家って何をしてるの?

【監督】基本的には、マンガを見ながら、「状況説明」と「セリフ」と「アクション」をすべて書き起こしていく作業です。シリーズ構成が決まったら、何人かの脚本家が選ばれて、各話の担当になります。まずは、ざっくり話の内容を記したあらすじを作り、監督やプロデューサー製作委員会のOKが出たら、シナリオ化していきます。

【監督】現在のシナリオは、20字×40行の1枚800字の体裁であることがほとんどです。17~18枚程度のシナリオで、ちょうどCMを除いた21分のテレビ番組になります。

ユーリあーこれ! マンガセリフそのままだからよくわかる!「……やっと見つけたぜ……、ウィル!」ってセリフがグッとくるんだよ?。でも、マンガを書き起こすだけなら、それこそ私にもできそう(笑)

【監督】原作つきの脚本だと、ちょっと練習すればできるかもね。原作つきの脚本にクリエイティブな要素があるとすれば、たとえば、その話は1巻から2巻の真ん中までを21分で収めようとなったとして、そのまま書き起こすと視聴者に内容が伝わりづらいと思ったら、シーンの前後にセリフを書き足したりして補足することですね。ただし、おもしろさは原作の中にすでにあるから、原作のそのおもしろさをアニメで再現することが大切です。

■「ドラえもん」と「ちびまる子ちゃん」

Q オリジナル脚本はどうやって作るの?

シンジ脚本家オリジナルの脚本を書く場合もありますよね?

【監督】当然あります。その場合は、シリーズ構成脚本家に発注する前に、まずは企画の段階でプロデューサーなり監督が、どんなアニメにするのかイメージを持っていなければなりません。どんな世界観で、どんなキャラクターで、どんなストーリー構成なのか。自分たちで「原案」を作っていくイメージです。それを脚本家と打ち合わせを重ねてブラッシュアップし、シナリオにしていく感じです。もちろん作家性の強い映画監督は、それらを全部自分でやってしまうことが多いけれど。

シンジドラえもん』とか『ちびまる子ちゃん』とか、原作マンガがあっても、現在放送されているのはオリジナル脚本ですよね。

【監督】はい。そのようなすでにキャラクターや世界観が定まっている作品で、新しいお話のシナリオ発注をするときは、「この話のテーマは友情」「バレンタインデーの話」といった設定や条件を提示して、脚本家シナリオ化を依頼することになります。当然、脚本家レベルによって、おもしろい話になったり、つまらない話になったり……と。

ユーリ私、そういうの得意かも!

■原作なしのアニメを作れる脚本家はひとにぎり

シンジさっきから聞いてれば、自信過剰なんだよ。お前、アホなくせに。脚本家なんて才能がなきゃ無理だろ。お前も俺もただのアニメ好きなんだから、監督の話を静かに聞いていろ。

ユーリうざい! ネガティブ男、いらない! てか、モテない!

シンジは !? 俺のどこがネガティブなんだよ! ただの現実主義者だ。

【監督】まあまあ(笑)。実際、原作ありとなしでは、脚本の大変さは全然違いますアニメ脚本家で原作なしものができる人は非常に少ないのが現実。原作ありの仕事とは要求されている技術が違うからね。

さて、「キャラクターデザイン」と「美術設定」と「シナリオ」がそろえば、いよいよアニメ作りの準備ができたことになります。この段階まできたら、ここまで紹介してきたスタッフ以外にも、「作画監督」「撮影監督」「演出家」などの主要スタッフが決定しています。そして、次のステップは「絵コンテ」です。

ユーリついに「絵コンテ」が登場! 前に監督が書いていたやつだ。

【監督】絵コンテは、アニメの設計図! 設計図ができあがれば、あとはそれに沿って組み立てるのみ。さあ、行きましょう!

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大塚 隆史(おおつか・たかし
アニメ監督
1981年生まれ、大阪府出身。専門学校卒業後、アニメ制作会社で動画を経験、その後東映アニメーションで演出助手に。『ふたりはプリキュアMax Heart』で演出家デビュー。『映画 プリキュアオール スターズDX1~3』『スマイルプリキュア!』を監督として手掛けた後フリーランスとなり、2019年に『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』、2021年テレビアニメシリーズ三代目 JSB キッズアニメ KICK&SLIDE』を脚本・監督。2022年には映画『ハケンアニメ』内の劇中アニメ『運命戦線リデルライト』の監督を務めた。

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堀田 孝之(ほった・たかゆき
ライター編集者
1984年生まれ、山梨県出身。横浜国立大学中退、日本映画学校卒業後、いくつかの出版社を経て独立。著書に『気がつけば警備員になっていた。』(笠倉出版社)、共著書に『「鬼滅の刃」に学ぶ絶望から立ち上がるための27の言葉』(笠倉出版社)、『交通誘導員ヨレヨレ漫画日記』(三五館シンンャ/フォレスト出版)がある。本書では、アニメ初心者代表として構成を担当。好きなアニメは『天気の子』『ウマ娘 プリティーダービー』。

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フナヤマ ヤスアキ 漫画家イラストレーター
1987年生まれ、山形県出身。モノ・トレンド情報サイト『GetNavi web』にて漫画「エレクトロジー」を連載中。SF・ホラーオカルト・妖怪など目に見えない世界に興味がある。ネコ好き。好きなアニメは『となりのトトロ』『ゲゲゲの鬼太郎』。

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漫画家の長谷川町子さん。「サザエさん」原作者。国民栄誉賞を受賞した。 - 写真=時事通信フォト


(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

懐古主義の年寄りのためだけに原作者不在でだらだらやってるだけ。見苦しい事この上ない。





アメリカのDCやマーベルでは作品の権利は企業が管理して、スタッフが変わるたびに内容も変わる。手塚治虫も永井豪もプロダクションが版権を管理してるのであって、作者が*だから続きを描いていけないというのならベルセルクの続きも描けなくなってしまう。原作者以外描くなというのなら、富野監督作品以外ガンダムではないということになるし『ORIGIN』もダメになってしまう。


この基本を知らないと、『バットマン キリングジョーク』でバットマンがジョーカーを*たり、『エイジ・オブ・アポカリプス』でプロフェッサーXが*でたりマグニートーがX-MENを率いたりしてはいけないということになってしまう。作品など企業のオモチャにすぎない。同人誌の同人誌が生まれてる状況で原典主義に傾倒してもキリスト教の時代のユダヤ人みたいなもんだろう。


無限ループって怖いよね


ドラえもんやクレしんはともかく、だいたいウジテレビのせい。


サザエさんなんて21世紀の令和時代に20世紀の昭和のままの世界を描いているからファンタジーになっちゃってる。波平のオフィスにPCがないって、あの人会社で何やってるんですか?


アニメじゃないけど、マンガなら『ゴルゴ13』さいとう・プロダクション、『新クレヨンしんちゃん』UYスタジオ、『新ナニワ金融道』青木雄二プロダクションが無くなった作者の跡(あと)を継いで連載してる!!


「たかが二次創作に元ネタの作品名を名乗らせるのは醜い」と答える。ただしプロダクション形式なら一次性は持続されるし、シリーズ名にすぎない場合も(客観的にそうと理解できるなら)問題ない。


声優が*までやってるのは流石に狂ってると思う